脇差し 銘:井上和泉守國貞
(いのうえいずみのかみくにさだ)
(菊紋)寛文五年八月日
Wakizashi:Inoue Izuminokami Kunisada
新刀・摂津 江戸前期 特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:51.6(一尺七寸弱) 反り:1.0 元幅:3.24
先幅:2.23 元重ね:0.70 先重ね:0.55 穴2
【コメント】
井上真改作、真改國貞銘の豪壮で華やかな脇差し、後に『大阪正宗』と称される男の大成を確信する、秀抜なる出来映えです。
真改は寛永七年(一六三〇年)、親國貞の次男として生まれ、十九歳頃より父の代作代銘を行い、新刀随一と言われる沸出来の見事な作風を展開し、世上『大阪正宗』と称される名工です。初銘は父と同じく『國貞』と銘し、二十四歳の承応二年(一六五三年)に和泉守を受領、万治四年(一六六一年)には朝廷より菊紋を切ることを許されています。以降、寛文十二年(一六七二年)八月まで『井上和泉守国貞』と銘し、寛文十二年八月に『井上真改』と改銘、天和二年(一六八二年)十一月に五十三歳で没しています。
本作は寛文五年、真改三十六歳の頃の作、井上を冠するいわゆる真改國貞銘です。寛文新刀らしい姿ではありますが、通常の作に比して身幅ガチッとして刃肉もタップリ付いた豪壮な造り込みになっています。小板目が詰み、地沸が微塵に厚く付いた鉄は明るく、透き通るような冴えを見せています。箱掛かった互の目を交えた濤瀾風の焼き刃は、玉を焼くなど、共に大阪新刀の双璧を成した、越前守助廣を思わせる明るく華やかな出来映えです。前期作らしい放胆な刃取りで、華麗な出来映えを示しながら、何とも言えない重厚感、品格が刀身から滲み出ています。青く澄み渡った地鉄、朝日に照らし出されたかのように輝く匂い口は、他工寄せ付けない真改の独壇場です。間違いなく真改國貞銘の代表作になる優品です。