刀 無銘(備前國宇甘住雲生)
(びぜんのくにうかいじゅううんしょう)
Katana:Mumei(Unsho)
古刀・備前 鎌倉後期 拵え付き 第六十回重要刀剣指定品
刃長:64.0(二尺一寸一分) 反り:1.5 元幅:2.48
先幅:1.53 元重ね:0.60 先重ね:0.40 穴3(内1埋)
時代打刀拵え(全長・97、柄・22.5革巻き黒漆塗り 縁、赤銅地縞 頭、角 目貫、赤銅地金色絵大黒図 鐔、銅石目地木瓜形四方猪の目図 笄、山銅魚子地金色絵馬具図 鞘、黒艶漆塗り 下げ緒、黒)付き。
【コメント】
備前國宇甘住雲生(無銘)の重要刀剣、無類の鍛えの良さを見せる、感動的な一振りです。
雲類とは鎌倉後期から南北朝期に掛けて、備前国宇甘の地に住し鍛刀していた一派で、雲生、雲次、雲重と続き、備前國に住しながら、長船鍛冶とはその系統を異にする刀工集団です。雲生は子とも弟とも云う、雲次と共に京へ上り、後醍醐天皇の御番鍛冶を務めました。雲生は鍛刀する前夜、神仏に祈願し、その夜の夢で、空中に漂う霊雲を見て大いに悟り、これを刃文に応用して鍛え、献上しました。その結果、天皇より『刃文の様、正に雲の如し』とのお言葉を賜り、それ以後『雲』の文字を用いるようになったと云います。その作風としては、備前長船、備中青江、山城来物に近似した、またはこれらを融合したようなものが見受けられます。
本工の雲生は、嘉元(一三〇三~〇六年)頃の人物で、雲類の棟梁格に当たります。本作に於ける地鉄の美しさは、間違いなく雲生作中最上のものと言えるでしょう。美麗な小杢目肌の鍛えに地沸が厚く微塵に付いて、所々稲妻状の地景が走っています。地の光の反射が強く、地の緩みは皆無、雲類特有の指で押したような暗帯を伴う古調な地斑映りが、ほのかに立っています。匂い勝ちの直刃は、柔らかな小足、小互の目足を配し、地にあった稲妻状の地景が、二ヵ所刃縁に掛かって、長い金筋を形成しています。刀姿、地刃の出来、全てに於いて上品この上なく、感動的な一振りです。
鎌倉期の雲類の特徴を余す所なく体現した、雲生の傑作刀、鍛えの美しさを堪能されたい場合は、絶対に本刀をお薦め致します。